鳥取養育研究所 / NPO法人子どもの虐待防止ネットワーク鳥取 / 鳥取県児童養護施設協議会

前身の鳥取養育研究会の設立の呼びかけ文

前身の鳥取養育研究会の設立の呼びかけ文(初代会長 田丸 敏高 作成)

すべての子どもたちに、人間としての尊厳と子どもらしい生活、多面的で調和のとれた発達を保障するために、鳥取の地に養育研究会を設立することを呼びかける。

Ⅰ 趣旨
 1986年、この研究会の前身にあたる「鳥取養育研究会」が設立された。この会には、子どもの福祉(児童養護、保育、自立支援、母子支援、家庭支援等々)、教育、医療、法律、行政等々の関係者が集い、定例会を開き、子どもに関する学習や事例研究を積み重ね、会誌を発行し、鳥取県内の児童福祉のあり方について検討を行ってきた。その成果は、子どもに関わる職員の資質向上や子どものための施設改革、関連諸機関の連携として結実していった。しかし、その後の児童問題の拡大の中、不登校やいじめ、学級崩壊と呼ばれる教育問題、育児不安や虐待などの家庭問題、非行や少年犯罪と少年法の改定、乳幼児精神医学や心理・発達理諭のあり方をめぐる議論、などの個別課題が次々と発生し、施設も機関もその対応に追われていった。そして、県全体の福祉・教育・医療について考えるこの会は、課題だけを残して、活動停止状態に至った。本研究会は、改めて、子どもを中心に据え、広い視野と展望をもって、これらの課題を発展的に引き継ぐ必要から生まれた。
 1989年に国連で採択され、1994年に我が国の国会で批准された「子どもの権利条約」は、わが国における児童福祉の発展のために必要な視点を与えている。すべての子どもたちに「生存・保護・発達・参加」の権利を保障しようという精神は、鳥取県における児童福祉の現状を点検・評価し、その改善を図るときにも、有効であり必要でもある。安心できる家庭あるいはそれに替わる施設、家庭を支えてくれる保育所や学童保育、楽しい幼稚園や学校、適切・迅速に対応する専門機関、安定した地域社会によってこそ、子どもの「生存・保護・発達・参加」は守られる。しかし、パブル崩壊以降、失業や生活不安、経済的破綻や自殺、青少年をターゲットとした商業主義的な「文化」、援助交際や非行、手どもを巻き込む犯罪、過度の競争主義と不登校、家庭崩壊や児童虐待等が進行する中、無防備な子どもたちは、いまや健全な発達が保障されているとはとうてい言い難い状況にある。児童福祉は、こうした子どもたちを守る最後の砦となっている。「子どもの権利条約」にうたわれている思想を発展させ、21世紀の養育理論と児童福祉を創造していくことは、本研究会の基本的な課題である。
 ところで、新しい養育理論の創造は、机上からうまれるものでは到底ない。それは、現代における子育ての混乱状況に立ち向かうさまざまな実践的努力……そこには、養護施設や保育所を含む児童福祉事業、家庭支援事業、医療事業、教育活動が含まれている……に基づいてこそ生まれる。そうした実践的努力を交流しあい、学びあい、相互批判することを通じて、真に有効な養育理論が生まれる。しかし一方、広い意味での発達科学(子どもの福祉・教育・医療に関わる諸科学)の成果を引き継ぐことなしには、豊かな養育理論は生まれない。狭い個人的な経験や思いこみに依拠するのではなく、さまざまな実証的資料や事例検討、歴史的資料等の資料を客観的に研究してはじめて、求められている養育理論は可能になる。したがって、本研究会においては、子どもの生活と発違に関わる実践を中心に据えながら、さまざまな理論の検討、資料に基づく自由な議論を活発に行っていく必要がある。
 以上の趣旨により、児童福祉の伝統のある鳥取の地に、あまたの叡知を寄せ合い、養育研究会の設立を呼びかけるものである。

Ⅱ 当面の課題
1 鳥取県内の児童福祉の歴史と現実について研究する。その際、福祉の仕事に携わる人々の行動や意識の事実に基づきながら、子どもと福祉の実態を明らかにする。

2 現代の児童養護における生活の意義を明らかにする。その際、施設を「管理」や「治療」の場として部分的にとらえるのではなく、生活の復権の場としての全体的にとらえ意義を示していく。そのために、養護施設等における生活過程に関する研究に積極的に取り組む。養育環境や養育活動との関わりで営まれている子どもの生活過程を明らかにすることを通じて、子どものパーソナリティーの発達と養護過程について明らかにする。

3 こうした生活の事実は、保育所や学童保育はもちろんのこと、幼稚園や学校等においても、明らかにされる必要がある。一人ひとりの子どもが、子どもらしい生活を安心して営むことができ、個性に応じた成長が実現されているかどうかは、あらゆる場で点検されていく必要ある。

4 保育所・学童保育・母子生活支援施設等では、職員と親との生活意職の違いが問題になっている。生活の中で個を大切であると考えるかは、立場や世代において異なっている。また、保育観(子育て観)の違いも、実際の子育てにいろいろな意識や行動の違いをもたらしている。さらに、親が施設や職員に何を期待しているかということと、職員が何を期待されていると感じているかとは異なる。こうした事柄について、子どもの事実に基づいて検討していく必要がある。

Ⅲ 組織
1 自主的で自由な研究を保障するための組織作りが求められる。そのために、
① 研究会の運営全般に関わる運営委員と事務局員、
② 具体的な研究計画を策定し研究を推進する研究員、
③ 研究を支援しその成果の普及を担う賛助会員、
をおく。

2 当面、研究会長および副会長をおき、研究会を代表する。

3 研究活動の提案、例会や研修会の企画、紀要やニュースの発行、財政については、運営委員会と事務局が担う。

4 研究員は、自主的な応募に基づき運営委員会が承認するか、必要に応じて運営委員会が依頼する。研究会は、研究員の研究活動を支援する。研究員は、子どものプライバシーを含む諸権利を守りつつ自主的に研究活動を行い、その成果を公開する。

5 賛助会員は、研究会の活動に賛同する個人および組織からなる。賛助会員は例会や研修会に参加したり、紀要報告等を読むことを通じて、研究会の研究成果を受け取ることができる。

6 「養育研究会紀要」を発行し、研究成果の普及に努める。

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